カテゴリ:Mouse
ハツカネズミ[編集]
学名 Mus musculus 染色体 2n = 40本, ゲノム ~3 Gb 英語名 the house mouse
進化史[編集]
アジア産を中心とする野生由来98個体のハツカネズミ(the house mouse, Mus musculus)の全ゲノムが開示され、ハツカネズミの東方移動に関する精度の高い歴史の再構築が行われている。我々は、ミトコンドリア全長DNAを用いて、地域固有のハプログループの特定し、それらの時空間動態の解析を行った結果、北方亜種系統Mus musculus musculus (MUS)については15,000~3000年間の5つの段階的な東方移動で特徴づけられ、イラン北部を始点とし、西中国、中国北部、韓半島を順次移動し、日本列島を終点とするものであった。11,000年前以降の4段階においてはアワ、キビの先史農耕の展開との関連が示唆された。さらに南アジア東南アジアに分布するMus musculus castaneus (CAS)については、8,000-3,000年間のインド北部を始点とした地理的分散が認められた。8000年前の中国北東部および3000年前のインド南部への移動、5000-4000年前の中国南部を含むインド・東南アジア沿岸部や島嶼地域での多様化、3500-2000年前の日本列島と雲南省(3500-2000年前)への移入イベントの存在が認知できた。これらは主に先史時代のイネの地理的展開との関連が示唆された。日本列島には3,000年前頃に韓半島からMUS、そしてそれより少し以前に南中国よりCASが移入したことが示され、人類学的、文化的寄与についての検討が望まれる。さらに、ユーラシアに展開している諸言語の系統や起源についても情報提供が可能と思われる。本研究では、Mus musculus は新規の分布域に移入する際は人類の農耕の展開とともに分布拡大を行い、一旦定着した後はその集団の遺伝的背景は今日に至るまで長期的に維持されることも確認できた。ハツカネズミの時空間動態を紐解くことで、今日の社会や文化の基盤形成に重要な役割を演じた過去1万年間の人類の移動の歴史を概観できるものと期待している。